SHARE
instagram
のみもののよみもの

第8話後編第8話「片浦レモンサイダー」後編

登場人物

草山 明久

報徳二宮神社

草山 明久

原田裕介

友桝飲料

原田裕介

二宮 尊徳

二宮 尊徳

(幼名・二宮金次郎)

片浦レモンサイダー

農家さんが丹精込めて育て上げる「片浦レモン」を小田原の特産物に。

原:

「片浦レモンサイダー」の後も「小田原みかんサイダー」「小田原梅サイダー」とシリーズ展開しましたが、久しぶりに小田原駅の近くのデパ地下に行ったら「片浦レモンの生ようかん」の売り場も見つけました。ユニークなアイデアで次々に展開されていますね。

草:

いや、生ようかんは小田原柑橘倶楽部からアイデアを募集して、地元の老舗和菓子屋さんが新たな特産品を作りたいと手を挙げてくださって試作を重ねて完成したものです。レモンと生ようかん、意外な組み合わせと思われるかもしれませんが、これがおいしいんですよ。私たち(小田原柑橘倶楽部)は、原料の供給や紹介と、販路など販売に関わる支援を行っています。パッケージデザインもこちらから提供しています。

原:

パッケージデザインや売り先、監修も無料でやっているってことですか?

草:

そうですね。そもそも私たちの目的は利潤追求ではありませんから。自然環境との調和を求めながら人間の分度をわきまえて、今まで以上に「人・もの・お金」を地域に循環させていくこと。そういう意味では小田原柑橘倶楽部の目的は、もうすでに叶っているといえます。

原:

新しいものを作れても伝わらないとやっぱり長くは続きません。でも、そこまで協力していただけるからこそ、作り手さんたちも安心して新しいことに挑戦していけるんですね。なるほど。当時、僕はまだ新人でしたが、草山さんからお話を伺っていた時も「ストーリーもあって、想いもあって、販路も開拓されてて、理想的だ」と感銘を受けていました。新人の頃にそんな理想形に出会ってしまいましたから、後にそれが難しいことだと分かりました(笑)。地域のためにという想いがあってもビジネスとして成立していなかったり、観光ビジネスとして儲けるためだけにサイダー作ったり、そうなるとなかなか厳しいんですよね。

草:

いや、あらかじめストーリーを作っていたわけではありません。それは後からなったもので。当時は今のようになるとは想像していませんでした。ただ、この製品がうまく循環していくものになるか、というのはいつも熟考しています。二宮尊徳先生も、その土地で収穫される穀物の量を過去180年もさかのぼってデータをとり、その上で今後どういう穀物をどれだけ育てれば良いのか、その後10年にわたる長期での非常に具体的な事業収支計画を提案していたと言いますから。

原:

えーっ、180年!パソコンもない紙の時代に既にそんなことを実践されていたんですね。今のビジネススタイルにもつながる考えがもう当時からあったんですね。

草:

そうですね。そうやって村や藩を復興させたのだと思いますが、大切にしていたのは人々の心の改革だったと言います。次にご紹介したい場所は、小田原柑橘倶楽部の拠点となる場所です。そちらに移動してから、これから考えていることについてもお話ししたいと思います。

二宮尊徳翁のことば

二宮尊徳翁が残した言葉には現代を生きる私たちへの大きなヒントがありました。その一部をご紹介します。

【報徳(ほうとく)】

他者や社会から受けた恩に感謝し、道徳的な行いによって報いること。二宮尊徳の思想に基づき、勤勉・誠実・利他の精神を重んじる。

【推譲(すいじょう)】

自分の利益を求めるのではなく、他者に譲ること。謙虚さや利他の精神を表し、社会の調和や発展につながる考え方。

【荒地は荒地の力で..】

厳しい環境や状況の中でも、その場にある資源や特性を活かし、自らの力で切り開いていくことで、成長の可能性を見出す。

【心田開発(しんでんかいはつ)】

自助と推譲の精神で動く人が一人、二人と少しずつ増えていけば街の未来も明るくなる。「そもそも我が道は、人々の心の荒廃を開くのを本意とする。一人の心の荒廃が開けたならば土地の荒廃は何万町あろうとも恐れるものはない」

(二宮尊徳翁の一説を引用)

かつて東海道の宿場町として栄えた歴史ある小田原・南町エリアへ

「小田原柑橘倶楽部」の新しい拠点となる場所「箱根口ガレージ報徳広場」

原:

ここが新しい拠点なんですね。レトロな路面電車の車両もあって、本格的なカフェレストランもあり、充実していますね。なぜ、またここに広場を?

草:

箱根に近い小田原も観光で活気は出てきたのですが、それは小田原城や駅前に集中しています。ここはかつて東海道として栄えていた場所です。地震で当時の面影を残す建物は減ってしまいましたが、賑わいの場をもう一つ作ることで街に活気が戻ればと思いまして。小田原城を見てこちらにも足を伸ばして散策したり、箱根伊豆方面に向かう観光客の方が立ち寄る場所として、ここを利用していただけたらと思ったんです。路面電車は、これは地元の友人たちがここに走っていたであろう、路面電車を復活させようと盛り上がりまして、ここに置いてもいいですよと言うことで、実現したものなんです(笑)

原:

地元の皆さんの想いがここにも集合しているわけですね。隣りにある本屋さんも関連してるのですか?

草:

いえ、ここに広場ができてから本屋さんができて、裏には若い方がされている焙煎屋さんもできました。

原:

一つの拠点が生まれたことで人の流れが変わったんでしょうね。

草:

だといいんですが、まだまだこれからです。小田原の町も高齢化が進んでいますから、若者が戻ってきたいと思ってもらえる場所にしないといけない。まぁ、数年かけて徐々に…と思っています。店内をご案内しましょう。

原:

サイダーにしろ、カフェにしろ、境内もそうでしたが、高い美意識を感じます。デザインにもこだわられる理由はそこにあるんですね。

草:

子どもたちが大きくなっても、ここで働きたいと思える魅力的な街にしないといけません。ここのカフェも夕方までは営業をしていますが、夕方からは「地域食堂」になります。子どもだけではなく、若者、ご高齢の方、3世代が交流する場をつくりたくて。そんな場所が魅力的な空間だったら素敵でしょ。夕方まで営業しているカフェの生計からの余剰を使って、夕方からは3世代交流会や子育て支援を目的としたNPO事業の活動の場として提供したり。この場所も、時間をかけて地域の皆さんと共に作っていこうと思っています。これまでは「競争」の社会だと言われていましたがね、これからは「共に創る、共創(きょうそう)」の社会を目指すべきだと考えています。

原:

誠実に働き、そこで生まれた利益を次に回して、また地域に還元していく。常々、地サイダーとして理想的な展開をされていると思っていましたが、改めてお伺いして想像以上でした。今日は貴重なお話、本当にありがとうございました。

一本の「片浦レモンサイダー」を辿る私たちの旅は、江戸時代にさかのぼり、現代、未来を見つめる、壮大な時間旅行となりました。
「経済のない道徳はたわ言であり、道徳のない経済は犯罪である」これは報徳神社の境内に掲げられている尊徳翁由来の言葉です。まさに草山さんをはじめ小田原柑橘倶楽部の皆さん、小田原の皆さんは、二宮尊徳が求める「道徳のある経済」に取り組んでいます。
もし、校庭にある二宮金次郎像に出会ったら今度はあなたが周りの人たちに教えてあげてください。何をした人か、何を伝えている人か、今、小田原で何が起きているのかを。

今回ご紹介したのみものはこちら

小田原柑橘倶楽部

片浦レモンサイダー

内容量:330ml
小田原市内小売店などでお買い求めいただけます

報徳二宮神社

神奈川県小田原市城内8-10

(小田原城址公園内)

参拝時間 6:00-17:00

TEL: 050-1721-2868

箱根口ガレージ報徳広場

神奈川県小田原市南町2丁目1-60

営業時間 10:00〜17:00

TEL: 0465-23-2881

定休日 不定休

これまでの のみもののよみもの